
VMwareのライセンス体系変更や、仮想環境でのOracleライセンス問題、そして古いOS・Oracleを載せ替えられる新しいハードウェアがない――こうした課題を背景に、仮想化基盤をOracle Linux KVMへ移行する企業が増えています。
一方で、実際に導入を検討する段階になると、「自社と近い状況の企業は、どのように移行して、どんな効果を得たのか」という他社事例が気になるものです。
本記事では、Oracle Linux KVMの導入事例を「金融」「製造」「サービス」の3業界に分け、それぞれの背景・課題・解決アプローチ・導入効果を紹介します。VMware ESXiからの移行だけでなく、物理サーバーからのレガシー環境の延命まで、パターンの異なる3つの事例を取り上げます。Oracleライセンスへの対応や、古いOS・Oracle環境を維持しながら基盤を刷新する方法を検討する際の参考にしてください。
この記事で分かること
- Oracle Linux KVMが、どのような課題を抱える企業に選ばれているのか
- 金融・製造・サービスの業界別に見る、移行の背景と導入効果
- VMware移行(V2V)とレガシー延命(P2V)という、2つの移行パターンの違い
1. 金融業界|ハードウェアのサポート切れを、レガシー延命で乗り切る
背景と課題
この金融業界の企業では、基幹システムを支えるハードウェアがサポート切れを迎え、更改が避けられない状況になっていました。ところが、稼働しているOSとOracleのバージョンが古く、それらを動作させられる新しいハードウェアを調達できないという壁に直面します。
OSやOracleを新しいバージョンへ更新する方法もありますが、基幹システムの場合、アプリケーションの改修や動作検証などに大きなコストと時間がかかる可能性があります。
そこで、既存のOS・Oracle環境を維持しながら、ハードウェアだけを更改する方法が検討されました。
解決アプローチ
この課題に対して採用されたのが、Oracle Linux KVMによる仮想化です。
現行の環境をそのまま仮想マシンとして新しいハードウェア上へ移行することで、古いOS・Oracleのバージョンを維持したまま、ハードウェアだけを刷新しました。物理環境から仮想環境への移行(P2V)にあたっては、基幹システムのダウンタイムを最小限に抑える方式が設計されています。あわせて、散在していたアプリケーション環境や管理環境を集約し、災害対策のためのデータ同期環境も整えられました。
導入の効果
この移行により、システムの安定性・可用性・柔軟性が向上し、より強固な運用基盤が確立されました。ポイントは、いったんOracle Linux KVM上で現行環境を延命させたうえで、その後に段階的にOS・Oracleのバージョンアップを進めていける点です。「まず止まらない土台を作り、それから中身を新しくする」という、リスクを抑えた進め方が可能になりました。
古いOS・Oracleを動かし続けるためのレガシー延命の考え方については、別記事「古いOS・Oracleを動かし続けたい|レガシー環境の延命とKVM活用」で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
2. 製造業界|データセンター移設を機に、Oracle環境だけをKVMへ
背景と課題
この製造業界の企業では、VMware ESXi環境で基幹システムのOracleデータベースと、複数のアプリケーション環境が稼働していました。かねてからOracleライセンス問題への懸念があり、基幹システムをVMware以外の基盤へ移すことを検討していたところに、本社移転が決定します。本社にあった仮想基盤と基幹システムを、データセンターへ移設する必要が生じました。
また、WindowsやOracleのバージョンが古く、物理環境への移行が難しいことから、仮想基盤を継続して利用する必要もありました。
そこで、ハードウェアの更改とデータセンターへの移設を機に、Oracle環境の仮想基盤を見直すことになりました。
解決アプローチ
この企業が選んだのは、すべてを一度に置き換えるのではなく、「必要なところだけをKVMへ移す」という現実的なアプローチでした。移設先に新しい仮想基盤としてOracle Linux KVMを構築し、既存の仮想環境から仮想マシン単位で移行(V2V)します。その際、Oracleライセンス問題の懸念があるOracleデータベース環境はOracle Linux KVMへ移す一方で、それ以外のアプリケーション環境は、使い慣れたVMware ESXiをそのまま継続する構成としました。
導入の効果
Oracleの稼働環境をVMware ESXiからOracle Linux KVMへ変更したことで、Oracleライセンス問題の懸念を解消できました。同時に、古いWindows・Oracleバージョンのシステムの延命も実現しています。ライセンス上のリスクが高い部分だけをKVMへ移し、そうでない部分は慣れた環境を残す――この「適材適所」の使い分けが、移行のリスクと運用負荷を抑えるうえで効果的でした。
VMwareからKVMへの移行で注意すべき点や、よくある失敗と回避策については、別記事「VMware→KVM移行の落とし穴|よくある失敗と回避策」で解説しています。
3. サービス業界|多数のOracleを、大規模なV2V移行で最新基盤へ
背景と課題
このサービス業界の企業では、多数のOracle データベースをVMware上の仮想環境で稼働させていました。課題は2つです。1つは、仮想環境全体がOracleライセンスの課金対象になり得るという、ライセンス問題への懸念。もう1つは、利用しているOS・Oracleのバージョンが古く、新しいハードウェア環境へそのままでは移行できないという問題です。仮想環境の更改時期を迎えるなかで、Oracleライセンスへの対応と、古いOracle環境の継続稼働を同時に実現する必要がありました。
解決アプローチ
まず、コンサルティングを通じて、古いOS・Oracleバージョンの組み合わせが問題なく動作するかを一つひとつ確認するところから始めました。そのうえで、HCI(ハイパーコンバージド基盤)上にOracle Linux KVMの環境を構築し、VMwareから仮想マシン単位で順次移行(V2V)していきます。多数の仮想サーバーを一度に切り替えるのではなく、段階的に移していくことで、移行に伴うリスクを分散させました。
導入の効果
最終的には、50仮想サーバー環境をVMwareからOracle Linux KVMへ移行し、安定稼働を実現しました。これにより、Oracleライセンス問題への懸念を解消するとともに、古いOracle環境から新しいHCI環境への移行を実現しています。「数が多く、しかも古い」という難易度の高い環境でも、事前の稼働確認と段階的な移行を組み合わせることで、安全に最新基盤へ移し替えられることを示した事例です。
3つの事例から見える、導入成功の共通点
業界も規模も異なる3つの事例ですが、導入の背景や移行方法には共通するポイントがあります。

- 動機は「Oracleライセンス問題への対応」で共通している。いずれの事例も、仮想環境でのOracleライセンスの負担・リスクを抑えることが、移行の大きな動機になっています。Oracle Linux KVMのハードパーティショニングを活用することで、Oracle データベースを実行するCPUリソースを限定し、ライセンスを最適化できる点もポイントです。
- 「古い環境が新ハードウェアに載らない」課題を、延命で解決している。古いOS・Oracleをそのまま新しい基盤の上で動かせることが、Oracle Linux KVMが選ばれる決め手になっています。
- 移行方式は、状況に応じてP2VとV2Vを使い分けている。物理環境からの延命はP2V、VMware ESXiからの移行はV2Vと、移行元の環境に応じた方式が選ばれています。
- 「まず現行のまま移行し、その後に更新する」段階的アプローチが有効。いきなりシステム全体を作り替えるのではなく、まず既存環境をKVMへ移行して稼働基盤を確保し、その後にOS・Oracleなどを更新することで、移行に伴うリスクを抑えられます。
- 必要な範囲だけをKVMへ移す、という選択もできる。すべてを移行するのではなく、ライセンス上のリスクが高いOracle環境だけをKVMへ移し、他は既存環境を残す構成も現実的な選択肢です。
まとめ
- Oracle Linux KVMは、Oracleライセンスの最適化・レガシー環境の延命・VMwareライセンス問題への対応という課題を背景に導入が進んでいる
- 金融業界の事例では、ハードウェアのサポート切れに対し、現行環境をP2Vで延命し、段階的なバージョンアップの土台を作った
- 製造業界の事例では、データセンター移設を機に、Oracle環境だけをKVMへV2V移行し、他はVMwareを継続する使い分けを実現した
- サービス業界の事例では、多数の古いOracle環境を、事前の稼働確認と段階的なV2Vで最新HCI基盤へ移行した
- 共通するのは、ライセンス問題の解消を動機に、延命と段階的移行でリスクを抑えている点
▼ 3つの導入事例を、さらに詳しく知りたい方へ
本記事では紹介しきれなかった、各事例の具体的なシステム構成、移行方式、プロジェクトのスケジュールなどを事例集にまとめています。自社の状況と近い事例を、具体的な構成レベルで確認したい方は、ぜひダウンロードのうえご覧ください。
https://www.insight-tec.com/download/document_0070
▼ Oracle Linux KVMへの移行をご検討の方へ
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