
執筆者:CRO 阿部 健一
先週、あるイベントのセミナーに出席しました。テーマは「AI時代の経営戦略と組織進化」でした。
講演者の方がお話されていたのは、AIが進化する今、これからは新たな着想が必要であり、この新しい着想は、新しい知と既存の知の組み合わせから生まれるということでした。
AIはネットから収集できる情報を容易に得られるようになり、その情報はコモディティ化していきます。その結果、最後に残るのは「新しい着想」と「現場で得られる知」であるということでした。
組織の進化を考えた場合、新しいアイデアを生み出すスキルと現場で情報を得られるスキルが重要になります。
「現場で得られる知」に関しては、偶然にも先に随筆した「商談成約率とデータ」に関するブログと通じており、営業が現場から得られる情報が商談の勝敗に関係するという点にあります。講師の方も営業はAIに置き換わりづらいとおっしゃっており、改めて、初回ブログで書いた「昭和の営業マンの生存」を意味するものだと感じました。
また、私がブログで述べた「現場から得られる情報が商談の勝敗に関係する」という観点とも非常に類似しており、強い共感を覚えました。
顧客から対面で得られる高付加価値な情報の取得が次の戦略の鍵になっていく一方で、「コモディティ化した情報」の対応に関わる業務はAIに置き換わっていくのだろうと改めて感じました。

さて、前置きが長くなりましたが、今回は少し視点を変え、これまで営業の行動として話してきた「①会う → ②聞く → ③提案する」に加え、「提案後のフォローと勝敗分析」について触れたいと思います。
当然、提案後には誰もが、「その提案が通ったのか、それともうまくいかなかったのか」という状況に直面します。その時、自分はどうするのかについて書きたいと思います。
実は最近、入札案件ではないのですが、提案でうまくいかなかった出来事がありました。提案であまり負けたことがないと書いた矢先にこのような結果となり、お恥ずかしい限りですが、今回はこの経験を基にテーマに沿ってお話しします。
この案件が不調になった大きな原因は、お客様の業績不振による投資の抑制でした。この場合、どうすれば提案が受け入れられたのか、本当に打つ手はなかったのかを改めて考えてみました。
業績の先行きが不透明になったとしても、一般的に必要な投資は行われますから、今回はこの課題解決の提案内容が、お客様にとって投資に値しないと判断されたということになります。提案側の論理として考えれば、お客様に対して投資の必然性をより強く訴求する必要があったという結果になります。
しかし、企業側が扱う商材にもよりますが、投資の必然性を訴求することは容易なことではありません。
仮に投資の必然性を十分に訴求できたとしても、必ずしもお客様の判断を覆すことができたとは限りませんが、改めて昭和の営業マンとして考えてみたいと思いました。
振り返れば、お客様から課題をご相談いただいたのは約2年前。当時は、その課題のビジネスインパクトは大きく、それを解決するための投資は必然であり、お客様も非常に積極的なものでした。
しかしながら、時間の経過とともに別の課題が生じました。それは業績不安という、企業にとって死活問題となる重要課題です。お客様にとっての課題の大きさや判断は様々ですが、その優先度はどの企業にとっても非常に高いものです。
結果として、2年前の課題の優先度は変わり、潮流も変化しました。我々から見ると、ビジネスの潮流の変化は企業内の様々な思考の組み合わせから生じるものですが、今回の反省としてこの思考(企業内の複数の思考・思想)を理解し判断に影響を与えることはできなかっただろうかとも考えました。
改めてまとめてみると、今回の提案に対する着目ポイントは、お客様の判断までの時間に下記の具体的なアクションをとる事だったと考えます。
- 早い段階での潮流変化の予見
- スピーディーな課題解決の促進
- 課題解決のための解像度の高い提案
- 提案に伴う商材の改良と合意形成
今回のブログでは、「提案後のフォローと勝敗分析」がテーマですので、提案後のフォローについても触れていきます。
提案後のフォローとは少し意味合いが異なりますが、一番大きかったのは、お客様から今回のビジネス判断について直接コンタクトがあり、私の携帯電話に連絡をいただいたことです。
これは些細なことではありますが、これがあるかないかでその後のフォローに大きな違いが出てきます。日本人の倫理観として、信頼関係を保つために、きちんと自らの意思を相手に直接伝えたいと思うのが一般的だと思います。
今回の判断についてお客様から伺った後、私はお客様に直接お会いし、今回の提案について、今後のビジネスにつながる非常に前向きな提案とアドバイスをいただきました。
お客様にも好意的に相談に乗っていただきましたし、私自身、このお客様のために今後もお役に立ちたいという感情が高まりました。
昭和の営業マンは思います。
仕事を通じてではありますが、このようなやり取りが人と人との信頼関係を築き、感情の高ぶりを覚えつつ、次のビジネスにつながっていくのだと。
ビジネスは単発で終わるものではなく、長くつながっていくものだと思いますが、これは人間関係そのものだと感じました。
前述記載したセミナーでは、もう一点興味深いことをおっしゃっていました。
人間にできてAIにできないものとして、「肉体労働」頭脳労働」感情労働」があるという内容です。「感情労働」は、まさにリアルの現場で挑む営業に必要となる価値だと思います。