
執筆者:CEO 森田 俊哉
昨年11月のCEOブログで、クルマのEV化が進む中、従来からのエンジンに慣れ親しんだ私のような世代は、EVではなくエンジンによるカーボンニュートラル対応が進むと嬉しいという記事を書きました。
それから半年ほどで、この状況は驚くほど大きく変化しました。
ホンダが今年の3月にEV戦略の見直しを発表しましたが、その要因は、EVに対する投資の累計損失が最大2.5兆円にのぼる見通しであることにあります。この損失の回復には、数年を要すると発表しており、今後はハイブリッド車の開発を優先していくようです。
米国ではEV購入に伴う税控除の対象条件が厳格化され、欧州(EU)でも、2035年以降のエンジン車の新車販売を禁じる方針に対して緩和策がとられました。
トヨタも次世代EV車の開発を中止するようです。しかし、トヨタは、EVだけでなくハイブリッドに力を入れていたため、EV市場後退のインパクトは小さいようです。個人的には、まだまだハイブリッドを含めたエンジン車が残りそうで嬉しいですが・・。
ちょっと躓いてしまったEVですが、EVには排気管がないため、走行中にNOxや排気由来PMを出しません。しかし実際には、発電時にエネルギーを使用しているので、環境負荷といった観点ではゼロではありません。
発電でエネルギーを使うのに、なぜEVの方が環境負荷の観点で有利なことが多いのか?
理由は、EVの駆動効率が非常に高いからです。EPA(US Environmental Protection Agency)によると、EVはバッテリーや回生ブレーキから取り出したエネルギーの約87~91%を走行に使えるのに対し、ガソリン車が実際の走行に使えるのは約16~25%だと説明しています。発電時の負荷を考慮しても、トータルで環境負荷が低いのは、EVであることは間違いありません。
今回のEVの失速は、エンジン車と比較してまだまだ価格が高い上に補助金がカットされた影響もありますが、個人的には充電に対する不安が大きな要因ではないかと思っています。充電に時間がかかることや、充電設備が非常に少ないことが不安に繋がったのではないでしょうか。EVは素晴らしい要素がたくさんある優れた技術ですが、それを支えるインフラが追いつかなかった形です。
どんなに素晴らしい技術も、それを活かすインフラが整わないと拡がっていけないという良い教訓になったのではないでしょうか?
現在、大量に電気を消費するAI技術も、電力や発熱といったインフラを整えていかないと、どこかでブレーキがかかってしまうかもしれません。最近では、発電所を月などの地球外に作ることでこの問題をクリアしようという計画もあり、もしかすると実現する日が来るかもしれません。宇宙まで巻き込んでこの問題をクリアできたら、また新たな技術の大きなステップになりそうですね。
