
キーマンズネットが2025年末にIT担当者408人を対象に実施した調査によると、VMware製品を利用している企業の約7割が他の技術・製品への移行を検討しています。移行理由の約半数(47.9%)は「ライセンス変更に伴うコスト増への懸念」——Broadcom買収後のVMwareコスト問題は、多くの企業にとって喫緊の課題となっています。
前回の記事「VMwareライセンス高騰の背景と、今検討すべき移行先の選択肢」では、VMwareライセンス変更の背景と移行先の選択肢について解説しました。その中で「Oracleデータベースを使用している場合のライセンス問題」を移行先選定のチェックポイントとして挙げましたが、今回はこの問題を深掘りします。
VMware上でOracleを運用している企業にとって、コスト問題はVMwareライセンスだけではありません。Oracleライセンスの算出方法によっては、想定の数倍のコストが発生することがあります。本記事では、なぜVMware上のOracleライセンスが高額になるのか、その仕組みと対策を解説します。
この記事で分かること
- 仮想化環境でのOracleライセンスカウントの基本ルール
- Soft PartitioningとHard Partitioningの違い
- Oracleライセンスコストを削減する具体的な方法
1. 仮想化環境におけるOracleライセンスの基本ルール
VMware上のOracleライセンスがなぜ高額になるのかを理解するには、まず仮想化環境でのライセンスカウントの基本ルールを押さえておく必要があります。
Oracleライセンスのカウント方法は、物理サーバーと仮想サーバーで大きく異なります。この違いを理解していないと、予想外のライセンス費用が発生する原因になります。
物理サーバーの場合
物理サーバーでOracleを動かす場合、ライセンスは「そのサーバーに搭載されているCPUのコア数」で算出されます。例えば、8コアCPUを2基搭載したサーバーなら、16コア分のライセンスが必要です(コア係数による換算あり)。シンプルで分かりやすい計算方法です。
仮想サーバーの場合(ここが問題)
仮想化環境の場合、「VMに割り当てたvCPU数」でライセンスが決まると思われがちですが、実際は異なります。Oracleの定める「Soft Partitioning」に該当する仮想化技術(VMwareやHyper-Vなど)では、VMに割り当てたリソースに関係なく、「物理サーバー全体のコア数」がライセンス対象となります。
つまり、4コアのVMを1つ動かすために、24コアの物理サーバー全体のライセンスが必要になるケースがあるのです。では、どのような仮想化技術がこの「物理サーバー全体」のルールに該当するのでしょうか。次のセクションで詳しく見ていきます。
2. Soft PartitioningとHard Partitioningの違い
Oracleはライセンスポリシーの中で、仮想化技術を「Soft Partitioning」と「Hard Partitioning」の2種類に分類しています。この分類によって、必要なライセンス数が大きく変わります。

Soft Partitioning(ソフトパーティショニング)
対象技術:VMware vSphere、Microsoft Hyper-V、Citrix XenServer など
Soft Partitioningに分類される仮想化技術では、VMへのリソース割り当てに関係なく、物理サーバー全体(クラスタ構成の場合はクラスタ全体)のコア数がライセンス対象となります。これは、ソフトウェアによるリソース制限はいつでも変更可能であり、Oracle DBがすべての物理リソースにアクセスできる可能性があるとOracleが判断しているためです。
Hard Partitioning(ハードパーティショニング)
対象技術:Oracle Linux KVM、Oracle VM、Solaris Zones(capped)、IBM LPAR など
Hard Partitioningに分類される仮想化技術では、VMに割り当てたコア数のみがライセンス対象となります。ハードウェアレベルでリソースが物理的に分離・制限されているとOracleが認めた技術です。Oracle Linux KVMはこのHard Partitioningに対応しており、必要なコア数分だけライセンスを購入すれば良いため、大幅なコスト削減が可能です。
Oracleパーティショニングポリシーとは
OracleはHard Partitioning対応技術の一覧を「Oracle Partitioning Policy」として公式に発表しています。このドキュメントには、どの仮想化技術がHard Partitioningとして認められるかが明記されており、ライセンス監査時の根拠となります。
Oracle Linux KVMの導入を検討する際は、最新のポリシーを確認することをお勧めします。
ここまで、Oracleライセンスの基本ルールとSoft/Hard Partitioningの違いを解説しました。では、VMware環境で実際にどのような問題が起きるのか、具体的に見ていきましょう。
3. VMware上でOracleを動かすとなぜ高額になるのか
VMwareはSoft Partitioningに分類されるため、VMに割り当てたリソースに関係なく、物理サーバー全体(クラスタ構成の場合はクラスタ全体)のコア数がライセンス対象となります。さらに、vMotion機能によりライセンス範囲が拡大するリスクや、VMwareライセンス高騰との「ダブルコスト問題」も発生します。以下、具体例を交えて解説します。
具体例:クラスタ環境でのライセンス算出
例えば、以下のようなVMware環境を考えます。
- 物理サーバー:4コア×2CPU×3台(クラスタ構成)= 合計24コア
- Oracle DBを動かすVM:vCPU 4コア×1台
直感的には「4コア分のライセンス」で済むと思いがちですが、VMwareはSoft Partitioningのため、クラスタ全体の24コアがライセンス対象となります。vMotionで他のホストに移動する可能性があるためです。
vMotionによるライセンス範囲の拡大
VMwareのvMotion機能を使うと、VMを稼働中のまま別の物理ホストに移動できます。この機能は運用上便利ですが、Oracleライセンスの観点では「VMがどのホストでも動く可能性がある」ことを意味します。そのため、vMotionの移動先となりうるすべてのホストがライセンス対象となり、結果的にクラスタ全体のライセンスが必要になります。
VMware+Oracleの「ダブルコスト問題」
さらに、2023年のBroadcomによるVMware買収以降、VMware自体のライセンスコストも大幅に上昇しています。VMwareライセンスの高騰とOracleライセンスの拡大という「ダブルパンチ」で、仮想化環境のコストが急増するケースが増えています。VMwareライセンスの変更点については「VMwareライセンス高騰の背景と、今検討すべき移行先の選択肢」で詳しく解説しています。
4. Oracleライセンスコストを削減する方法
仮想化環境のOracleライセンスコストを削減するには、いくつかのアプローチがあります。

① Hard Partitioning対応の仮想化基盤への移行
最も効果的な方法は、Hard Partitioning対応の仮想化技術に移行することです。Oracle Linux KVMやOracle VMに移行すれば、VMに割り当てたコア数のみがライセンス対象となり、大幅なコスト削減が可能です。
② Oracle Linux KVMの活用
Oracle Linux KVMは、Oracle社が公式にHard Partitioning対応を認めている仮想化技術です。KVM自体はオープンソースでライセンス費用がかからないため、「ハイパーバイザーのコスト削減」と「Oracleライセンスのコスト削減」を同時に実現できます。具体的なライセンス削減の仕組みについては、弊社CTOブログ「Oracle Databaseのライセンスの最適化」で図解付きで詳しく解説しています。
③ コア性能の高いCPUの採用
Oracleライセンスはコア数に基づいて算出されるため、コア性能の高いCPUを採用して総コア数を減らすことで、ライセンスコストを削減できます。ただし、これは根本的な解決策ではなく、併用すべきアプローチです。
④ クラウド移行の検討
Oracle Cloud Infrastructure(OCI)への移行や、AWS/AzureでのBYOL(Bring Your Own License)も選択肢の一つです。ただし、クラウドの場合は利用料とライセンス形態の組み合わせによっては割高になるケースもあるため、事前の試算が重要です。
5. Oracle Linux KVM導入で期待できる効果
Oracle Linux KVMを導入することで、以下の3つの効果が期待できます。
Oracleライセンスコストの大幅削減
Hard Partitioning対応により、VMに割り当てたコア数分のみのライセンスで済みます。前述の例(クラスタ24コア、VM 4コア)なら、必要なライセンスを24コア→4コアに削減でき、ライセンスコストを約83%削減できる計算になります。
VMwareライセンスコストの削減
KVMはオープンソースのハイパーバイザーであり、ライセンス費用が発生しません。VMwareからの移行により、ハイパーバイザーのコストをゼロにできます。
旧システムの延命
Oracle Linux KVMは古いバージョンのOSやデータベースにも対応しており、サポート終了した旧システムを仮想化環境で継続稼働させることが可能です。システム更改の猶予期間を確保しながら、コスト最適化を進められます。
Oracle Linux KVMの詳細については、3月公開予定の「Oracle Linux KVMとは?VMware・Oracleコスト問題を同時に解決する方法」で詳しく解説します。
まとめ
VMware上でOracleを運用する場合、Soft Partitioningの制約により、想定以上のライセンスコストが発生することがあります。
- 仮想化環境では「VMに割り当てたコア数」ではなく「物理サーバー全体のコア数」がライセンス対象になる可能性がある
- VMware、Hyper-VはSoft Partitioning(クラスタ全体がライセンス対象)
- Oracle Linux KVMはHard Partitioning(割り当てコアのみがライセンス対象)
- KVM移行により、VMwareとOracleの「ダブルコスト問題」を同時に解決できる
インサイトテクノロジーでは、25年以上にわたるデータベース技術のナレッジを活かし、Oracle Linux KVM移行をワンストップで支援しています。ライセンスコスト削減を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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