AIの電力消費量は今後変わっていくのか?

以前のブログ記事で、生成AIの稼働には膨大な電力を必要とするため、大手IT企業は自前の発電所を持ち始めていると書きました。このような状況のまま、AIは進化を続けていくのでしょうか?

生成AIを使ってやりとりをしていると、まるで人間と対話しているかのように感じます。しかし、人間の脳はそれほどエネルギーを消費しませんし、熱も発生しません。AIに比べて人間の脳は、驚くほど効率的です。たくさんのリソースを消費して生成AIで調べてみました(笑)

エネルギー効率の観点から両者を比較してみましょう。

・人間の脳のエネルギー消費
 消費電力:約 20ワット(W)
 これは電球1個分程度のエネルギーです。

・1日あたりのエネルギー消費:約 400〜500キロカロリー
 演算能力(推定):およそ 10^15(1ペタ)オペレーション/秒
 神経細胞(ニューロン)は約860億個、シナプス(接続)は約100兆個あるとされます。
 つまり、人間の脳は「ペタフロップス級の処理を20Wでこなす」という、極めて効率的な情報処理装置です。AIよりも凄い優秀ですね。

・大規模AIモデル(例:ChatGPT-4クラス)のエネルギー消費
 *推論(ユーザー1回の質問応答)での電力消費:
  数百ワット〜数キロワット相当(データセンター全体で)
  研究によると、ChatGPTが1件の質問に答えるのに約0.3〜1ワット時(Wh)を消費します。

 *モデル全体(訓練時)の電力消費:
  GPT-3の学習では、約 1,000万kWh(=1万MWh)が使われたと推定されています。
 これは約1,000世帯の年間電力消費量に相当します。

もの凄い差ですね!以下に比較まとめをしてみました。

項目人間の脳ChatGPT(大規模AI)
消費電力約20W数千〜数万W(データセンター単位)
演算能力約1ペタOPS数百〜数千ペタOPS(GPUクラスタ)
エネルギー効率非常に高い(自然進化の最適化)低い(半導体ベースの計算)
学習方法自己学習・適応大量データ+計算による教師付き学習
エネルギー源生化学的(糖と酸素)電気エネルギー(化石燃料・再エネ)

では、効率の違いの根本要因は何なのでしょうか?

  1. アーキテクチャの違い
    人間の脳は「超並列で、アナログ的で、イベント駆動型」の構造。
    AIは「デジタルで、逐次的で、常時動作」の構造。
  2. 情報表現の違い
    脳はニューロン間の結合強度(シナプス)を動的に変化させて情報を圧縮。
    AIは浮動小数点演算を大量に繰り返して確率分布を近似。
  3. 冗長性と熱損失
    半導体演算ではエネルギーの大部分が熱として失われる。
    脳は化学反応ベースで熱損失が極めて少ない。

現在のAIも、人間の脳を模倣すれば高速で低消費電力になるのではと思ってしまいました。実際に最新の研究では「ニューロモルフィック・コンピューティング(脳型コンピュータ)」という分野が注目されています。これはシナプスやニューロンのような構造をハードウェアで再現し、脳に近いエネルギー効率を目指すものです。既にIntel Loihi や IBM TrueNorth といった試作チップは、従来のGPUと比較してエネルギー効率が数百倍だそうです。これは、期待大ですね。

さて、この記事が今年最後のブログになりました。趣味や自分が感じた興味深い言葉や出来事を書いてきましたがやはり、AIの話は多くなりました。個人的には、今年も途切れずに執筆を継続できたことがよかったと思っています。2026年も宜しくお願いいたします。

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