データ統合とは?目的や進め方、データ統合基盤に必要なツールと事例を解説

「データ統合」とは、自社や関係企業に散在・点在するデータを活用するために、形式を統一して集約することをいいます。そして、統合したデータを管理、活用するための基本的な仕組みとなるものが「データ統合基盤」です。

データ統合とは?意味と定義

データ統合とは、自社の各部署や関係企業が個別に持っているデータを集約することです。

企業は顧客や商品、価格などさまざまなデータを持っています。ところが、社内にはさまざまなシステムがあるため、それぞれに対応した形式でデータが入力・登録されていることがよくあります。

日付や時間のデータを例に考えてみましょう。たとえば「2023年1月1日午前0時」をAシステムでは「23/01/01/00/00」と登録しているかもしれませんし、Bシステムでは「202301010000」と登録しているかもしれません。また、国内だけでなく海外にもデータが存在する場合は時差の問題があるため、国内と国外で同じ表記がされていても、必ずしも同じ瞬間を指しているとは限りません。このような異なったデータを活用するには、形式を統一する必要があるのです。

データ統合をする目的と理由

データ統合の目的は、データを新規事業やマーケティングに活用し、ビジネスを変革することです。それでは、データをあえて統合する必要があるのはなぜでしょうか。実はデータ統合をしないと主に2つの問題が生じます。

まず、データ統合が済んでいない場合、ユーザーは点在するデータベースそれぞれにアクセスして、データを確認しなければなりません。ところが、使われているSQLがデータベースによって異なることがあるなどの理由で、高いスキルを持っていないと取得さえできない場合があります。

また、データを取得しようとした各ユーザーが複雑なSQLを発行してしまうことで、業務データベースの負荷が大きくなってしまう問題も起きがちです。この場合、自社全体の業務の停止や遅延が発生しかねません。

データ統合によって一つのデータベースに集約すれば、全ユーザーが効率的にデータを取得できるだけでなく、統合用データベースのSQLだけを把握していればよい状態になります。つまり、必要なときに必要なデータを活用できるようになるのです。

DXから見たデータ統合の重要性

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、データの活用によってビジネスやサービス、製品に変革を起こそうとする考え方です。そのためには、新しいアイディアを実現するために素早くシステムを構築していく必要があります。その意味でデータ統合は非常に重要です。

統合されたデータベースがない場合、DXに必要なデータを必要なタイミングで活用できないことがあります。たとえば、あるチームのデータベースからデータを取得する必要があったとしても、「どのような目的で使うのか」「目星をつけたデータは本当に自分が探しているものなのか」などの確認に時間がかかってしまい、スピーディーに進められなくなってしまいます。データ統合していれば、いま必要なデータをタイムラグなく取得できるのです。

このように、データ統合は企業のDXのベースとして非常に重要な意味を持っています。

データ統合の期待できる効果・メリット

それでは、さらに具体的にはデータ統合によってどのような効果やメリットが期待できるのでしょうか。

1.迅速なデータ活用

データ統合をすることで、データを素早く活用できます。これはビジネスやサービスの変革がスピーディーに進んでいくということでもあります。

一方、データ統合をしていない場合、必要なデータのある場所や内容の確認、データ管理者からの許諾、データの取得、変換などさまざまなステップを踏まなければ活用できません。統合されたデータベースがある場合との差は歴然です。

2.コストの削減

データ統合を完了すると、誰もがアクセスできる一つのデータベース上に情報が集約されるので、新規ビジネスやサービス、製品の開発工数が減ります。その分だけ、開発コストやメンテナンスコストの削減が期待できます。

3.データガバナンスを利かせやすい

データガバナンスを利かせやすいのもメリットです。データが一か所にまとまっているため、「どの社員にどの項目についてアクセス権限を付与するか」といった仕組みをつくりやすくなります。

4.セキュリティを管理しやすい

データが散在・点在している場合、それぞれのデータベースやシステムについてセキュリティチェックをしなければなりません。統合していれば、一つのデータベースだけをチェックすればよいため、自社内外を問わずセキュリティを管理しやすくなります。

データ統合を実現する方法

実際にデータ統合を実現するには、どのようにすればよいのでしょうか。データ統合を進める際によく生じる問題と、それを解決するデータ統合基盤について紹介します。

1.データ統合で発生しがちな3つの問題

データ統合を進めようとするとき、主に3つの問題が生じることがあります。

まずは、データ統合のシステム構築に時間がかかってしまうという問題です。たとえば、あるデータベースのデータがほしかったとします。ところが、それがこれまでにデータ統合をしたことがないデータベースであった場合、統合のためのツールを準備するところからはじめなければなりません。そして、運用に問題がないことを確認してから、ようやく実際の統合に進むことになります。そのため統合をリクエストしてから、データ統合のスタートまでに1~2か月かかってしまうこともめずらしくありません。

データベースやシステムから抽出されるデータが古い場合があるという問題が起きることもあります。どういったスペックのシステムを構築できているかにもよりますが、統合できるデータが早くて1日前、遅いと2~3日前のデータということも少なくありません。

最後に、データベースを見ただけでは統合したデータの内容がわかりづらくなる問題もあります。本来はデータベースの「どこに」「どのような内容の」統合データがあるのか、一目でわかるようになっているのが理想的です。ところが、単純に複数のシステムからデータを抽出して統合用のデータベースに格納しただけでは、データが整理されません。その結果、ユーザーは自分のほしいデータをデータベース上から探すところから作業をスタートすることになってしまうのです。これではスムーズなデータ活用につながりません。

2.課題解決に貢献するデータ統合基盤、データ統合ソリューションは?

データ統合基盤を構築することで、データ統合の際に生じがちな問題を解決できます。データ統合基盤とは、統合したデータを管理・活用するための土台となるものです。データ統合基盤を構築するために、各システムや散財するデータソースから、データ統合ソリューションを利用してデータを連携する必要があります。

それではデータ統合ソリューションには、どのようなものがあるでしょうか。代表的なものに「ETLツール」「データレプリケーションツール」「データカタログツール」の3つがあります。

ETLとは「Extract(抽出)」「Transform(変換)」「Load(格納)」の略語です。元のシステムやデータベースからデータを抽出し、ユーザーの希望する形式に変換して統合、最後に別のデータベースに格納する一連の処理を指します。データ統合はこのプロセスのなかにあるため、ETLツールをそのまま利用できるのです。ただし、ETLでは統合のリアルタイム性の観点でやや劣ります。

データレプリケーションツールも、データ統合基盤を構成する一つの方法です。データレプリケーションとは、データベースと別のデータベースを連携させて、まったく同じものを複製(レプリケーション)することをいいます。大きなメリットは、データ連携のリアルタイム性です。ユーザーは数秒前のデータを閲覧できるので、常に鮮度の高い情報にアクセスできます。

もう一つ大切なのが、データカタログツールです。単純にデータを統合して別のデータベースに集めただけでは、データベース上のどこにほしい情報があるのかわからなくなってしまいます。たとえばデータの一覧表示やキーワードによる検索機能があれば、スピーディーなデータの利活用につながります。データカタログツールは、こうしたユーザーの利便性を格段に向上させるものです。

データ統合の進め方・手順

データ統合は、具体的にどのような手順で進めていけばよいのでしょうか。

1.データを統合することでなにをするのかを決める

まず大切なのは、データ統合する目的を決めることです。目的を決めないままデータ統合を進めようとすると、リソースを割いたにもかかわらず効果を得られなかったということになりかねません。少なくとも短中期的なゴールを想定しておきましょう。

2.誰が使うどのデータを統合するか決める

最初から自社内外にあるすべてのデータを統合する必要はありません。「マーケティング部が使うデータを統合する」「営業部に必要なデータを統合する」といったように、効果の高そうなデータからスタートするといいでしょう。

最終的にすべてのデータを統合する場合、一度に膨大な作業を進めようとすると収拾がつかなくなりがちです。フェーズ1、フェーズ2、フェーズ3……というように、段階的に進めていくといいでしょう。

3.ツールを選定するかを決める

目的や統合するデータを決めたら、ツールの選定に入りましょう。選定のポイントは主に2点あります。

まずはデータ統合によってやりたいことが実現できるツールであることです。実現したいことに優先順をつけて、要件を満たしているかチェックしましょう。

もう一つは、運用開始後の負担です。設定が煩雑だったり、サポート体制が充実していなかったりすると、運用担当者の負担が大きくなります。要件を満たしているツールのなかから、可能な限り負担の軽そうなものを選びましょう。

しかしながら、ツールの選定は簡単ではありません。要件や予算に合ったものであることかを判断できる、プロのコンサルタントの力を借りるのも一案です。

4.ハンズオン(体験版)でやりたいことを実現できるか確認する

ツールを選んだら、実際に使ってみることで要件を満たしているかを確認します。ほとんどのツールは、ハンズオンで試用できるはずです。実際に使ってみなければわからないこともありますので、時間をかけて使用感をチェックしましょう。

5.実際に導入・構築・運用する

ハンズオンで自社に必要なツールであることを確認したら、実際に導入します。データ統合の目的を達成できるよう、システムを構築していきましょう。

データ統合の事例

データ統合はどのようなケースで実施されているのでしょうか。

1.マーケティングのデータ統合の事例

マーケティングの現場では、データ統合が非常に重要です。たとえば、ある企業がキャンペーンを実施したとしましょう。このときECサイトでの売上データとキャンペーンWebサイトでの顧客の行動履歴に関するデータが、まったく異なるシステムで管理されていることはよくあります。当然ながら形式も異なっています。これらのデータをマーケティング戦略に活かすために、データ統合することが重要です。

マーケティング・営業部門中心に利用している分析用データベース基盤構築の事例として、弊社が取り扱う製品Qlik Repliateを利用したPayPay銀行様の事例をご紹介します。ぜひご覧ください。

2.生産活動のデータ統合事例

製品の生産状況をリアルタイムに把握することにも、データ統合は効果的です。たとえば営業部や販売店が取引先や顧客と商談をするときに、納期について言及することがあります。その際、自社だけでなく部品を製作する外部の協力会社のデータも連携して、生産状況を確認できる体制を整えておけば、より正確な納期がわかります。また、万一予定していた納期に生産が間に合わないような事態が生じてしまった場合、どの工程に問題があるのかを把握することにもなります。

このシステムを構築するには、データ統合にやや時間がかかるETLツールよりも、リアルタイム性に優れたデータレプリケーションツールを使うことが重要です。

データ統合基盤や製品を比較するときのポイント

データ統合基盤を構築するツールは、なにをポイントに比較するべきなのでしょうか。

1.自社のやりたいことを実現できるか

もっとも大切なポイントは、自社のやりたいことを実現できるツールであることです。どんなに素晴らしいツールでも、自社の要件を満たしていないものを導入するのは避けましょう。メーカーやベンダーに問い合わせるほか、プロのコンサルタントの意見を聞くなどして比較するとよいでしょう。

2.価格

データ統合基盤を構成するデータ統合ツールにはさまざまなものがあり、価格も異なります。最小構成で基盤を構築する場合は年間数百万円で済むこともありますが、ハイエンドのツールで大規模に構築すると年間1000万円以上かかることもあります。ただ、近年はサブスクリプションでの提供が一般的なので、予算の見通しは立てやすいでしょう。

3.オンプレミス or クラウド

提供形態がオンプレミスかクラウドかも大切な比較のポイントです。オンプレミスを選ぶ場合、自社に大規模なサーバーが必要になるだけでなく、比較的高額の初期費用がかかります。一方、クラウドの場合、初期費用を抑えられる反面、ランニングコストがかかります。このランニングコストが積み重なると、想定以上の高額になってしまうことがあるので注意が必要です。近年はクラウドが主流で、ツールの選択肢も豊富になっています。

4.運用開始後の使いやすさ

データ統合基盤は構築することがゴールではなく、そこから実際の運用がスタートします。そのため担当者が運用しやすいツールであることは非常に重要です。設定の変更や追加の簡易性、変更や追加によるシステム全体への影響度などをあらかじめ確認しておきましょう。特にデータ統合基盤を内製する企業にとっては非常に重要です。

ツールの使用感については、人の感性による部分もあります。必ず運用担当者が試用したうえで、採用を決定しましょう。

ツールで実現できることや価格、使いやすさなど実際に見ていただくことをおすすめします。
Qlik Replicateというマルチデータベース間のリアルタイムレプリケーションを実現するデータ統合ソリューションを弊社で取り扱っております。
データ統合基盤構築のコンサルティングやツールの選定、デモ・トライアルも可能ですのでぜひお問い合わせください。

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