Insight Technology

2021.04.27

見過ごせない電子ゴミ問題

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こんにちは!インサイトテクノロジー マーケティング本部の生熊です。

多くの企業では、コロナ禍でWeb会議や社内業務の電子化によって、コミュニケーションスタイルのデジタル化を実施しています。また、企業ITでは、自社データセンターからクラウドへの移行も進みつつあります。ある意味、コロナによって企業そして社会のデジタル化が進展したと言えるでしょう。コンシューマーの世界においても、SaaSの利用がこの10年で急速に拡大しました。多くの人々は様々なSaaSサービスを利用して音楽や動画を楽しみ、SNSで連絡を取り合い、ECサイトで買い物をしています。しかし、このようなデジタル化は新たな問題も生み出しています。その1つがe-waste(電子ゴミ)の増加です。

電子ゴミとは、バッテリーや電気回路、電子回路を搭載している電気製品や電子機器の廃棄物すべての総称です。この中には、スマートフォン(携帯電話)やテレビ、コンピュータ、プリンターのほか、ゲーム機、電子玩具や、冷蔵庫、洗濯機なども含まれます。

少々古いのですが、国連が2020年に発表した世界の電子ゴミに関するレポート(The Global E-waste Monitor 2020)では、2019年に世界で排出された電子ゴミは5,360万トンにのぼり、回収とリサイクルの対象となったのはわずか17.4%だったとしています。さらに2030年までに7,400万トンまで増加することが予測されると報告しています。

私自身も性能や機能が向上した新しいパソコンやスマートフォンなどのデジタルガジェットは欲しいと思っていますし、企業でもデジタル化の推進と扱うデータ量の増加によって、より高性能なIT機器の利用は不可欠となっています。しかし、利用者が回収とリサイクルされなかった電子ゴミの問題に関心を持たなければ、そのうち大きな問題となりデジタル化の推進に影響を及ぼす可能性があるのではと危惧しています。

日本では小型家電リサイクル法や、産業廃棄物処理法によって、電子ゴミのリサイクルが推進されています。「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」を覚えている方もいると思います。このプロジェクトは2017年4月から2019年3月まで2年間にわたり実施され、東京オリンピック・パラリンピックの金・銀・銅あわせて約5,000個のメダルに必要な金属量を100%回収することに成功しました。しかし、時々ニュースになるように山林へのゴミの不当投棄があるように、必ずしも完全に電子ゴミの回収 やリサイクルされているわけではありません。

また、回収した電子ゴミが海外に輸出されているケースもあります。輸出先は、少し前は中国が最も多く「世界のゴミ箱」と呼ばれていましたが、現在では固形ゴミの輸入を制限し、一部のゴミに関しては全面的に禁止しています。その結果、ゴミは行先を失い、今度は『グローバル・サウス』と呼ばれる、電子機器の廃棄を規制するためのルールがない主に南半球に位置する開発途上国に輸出されています。このような国々や地域では、電子部品に含まれる金などを取り出すために、基盤をバーナーで焼き、多くの有毒な化学物質が地域の空気中、土壌、水路に拡散され、汚染が進んでいるのです。

このブログを書くきっかけとなったのは、「グローバル・サウス」の1つで世界最大の電子機器廃棄物処理場であるアフリカのガーナにあるアグボグブロシーで活動している日本人アーティスト長坂真護の個展を見たことからなのです。

彼の作品には、電子ゴミが使われています。彼は、その作成した作品の売上で、ガスマスクを現地に届けています。電子ゴミを焼く際に発生する有毒ガスで多くの作業者は癌で若くして死んでしまうと言われているからです。

長坂真護さんのオンラインギャラリー:https://www.magogallery.online/

アグボグブロシーに持ち込まれる大半の電子ゴミは欧州圏から運び込まれたものだそうですが、我々が廃棄したデジタルガジェットがどこかで同じように処理されているかもしれません。これまで長らくIT業界に身を置き、テクノロジーの進化による性能や機能の拡大を良しとして来ました。今後もテクノロジーの進化によるメリットを追求すべきであるとは思いますが、その一方で持続性のあるITにするためにはどうすべきかを考えなければならないと思わせる出来事でした。皆さんはこの電子ゴミの問題をどのように思われますか?

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