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株式会社インサイトテクノロジー 
代表取締役社長 CEO

森田 俊哉
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大規模プロジェクトの舞台裏で見た「リーダーシップの真髄」

今回は仕事やテクノロジーの話ではなく、今まで私が一緒に働いたなかでもっとも印象に残っている方をご紹介したいと思います。

お名前を出すことはできませんので、仮にAさんとさせてください。Aさんは、私が初めて大規模なプロジェクトに参加した際に、プロジェクトマネージャーをされていた方です。
このプロジェクトは、当時としては先進的だったOracleデータベースを中心とした銀行システムを構築するというものでした。その頃はOracleのバージョンが7で、まだまだ大企業の基幹システムで採用されることは少なかったように記憶しています。

最初に「大規模」と言ったとおり、このプロジェクトはスタートからカットオーバーまで3年以上、そのうち1年以上の期間で同時に200名以上が稼働していました。そのプロジェクトの中で、私はデータベース周りの設計・構築およびチューニングからプログラマーのサポートまで担当していました。

銀行の基幹システムともなると、間違いは絶対に許されません。例えば、小数点以下の演算や四捨五入の順序のプログラムに誤りがあると1円単位で誤差(誤り)が発生してしまいます。その結果、わずかな数値の誤りで段ボール数十箱の帳票を廃棄したこともありました。1円くらい・・・と思っていましたが、銀行の業務ではたった1円であっても誤差は信用問題に関わるのです。
そのため、銀行系のシステム開発では絶対に誤りがないように、時間をかけてテストを繰り返します。このプロジェクトでも、テスト期間は1年以上に及びました。それとは対照的だったのが私が同時期に参画していた情報通信関連のシステムで、こちらは多少のバグ(間違い)があってもいいからと、3ヶ月ごとにリリースを繰り返していました。(詳細な話は2022年6月のブログに参照)

さて、大規模なプロジェクトではありがちなことですが、プロジェクトの遅延が起きました。開発・テストの遅延状況から見て、私自身も含めてプロジェクトメンバー皆が予定通りのカットオーバーは無理だろうと感じていました。

しかしそのような状況の中で、たった一人だけ予定通りに完遂することを考えていた人がいました。その方が、今回の話のAさんです。Aさんはプロジェクトを通して一度も、カットオーバーを遅らせると口にすることはありませんでした。進捗ミーティングでも予定通りに進むことを前提に話しをしていましたし、毎日プロジェクトに常駐し、大量の差し入れを行い、メンバーのモチベーションを上げていました。(あとで知りましたが、これは全て自腹だったそうです。)そうこうするうちに、進捗に懐疑的だったプロジェクトメンバーたちも、「予定通りに進めるためにはどうすればいいか?」といった視点で仕事をするようになり、だんだんプロジェクトの進捗がスムーズになっていきました。カットオーバーまであとわずか1ヶ月の時期には、Aさんが作業をする私の後ろにずっと座って(見張って?)「問題は、解決したのか?」と30分ごとに聞いてくるような状況で、そのたびに「いやいやそんな簡単に解決しませんよ」と返事をするようなやり取りをしていたことを思い出します。ですが、そんな中でも予定通りのカットオーバーを諦めているメンバーはもう誰もいませんでした。そして結果、見事に予定通りにシステムを稼働させることができたのです。

おわかりいただけますでしょうか?
困難な状況にあっても、Aさんはただの一言も、スケジュールが遅延しているからカットオーバーを遅らせると言いませんでした。その強い意志がメンバーの意識を変えた結果、全員が最後まで諦めずにプロジェクトに取り組むことができ、成功につながったのです。この経験は、プロジェクトにおける「リーダーシップ」の大切さを感じた出来事でした。正直、Aさんは非常に辛い立場だったと思います。私はプロジェクトを完遂するためには、リーダーの意志が非常に大事だということをAさんから学びました。

そして・・・
あのカットオーバーから20年以上経過した後、インサイトテクノロジーでコンサルティング業務を行っていた私は、とある銀行系列の大手SIerに伺う機会がありました。そこで偶然、副社長に就任されていたAさんにエレベーターでお会いすることができたのです。「覚えていますか?」と声をかけると、「忘れるわけないじゃないか!」とのお返事があり、翌日には副社長室に招かれ2時間以上お話させていただきました。後日、昔のプロジェクトメンバーを集めた懇親会にも来ていただいたのは、大変嬉しい思い出です。プロジェクトの1メンバーでしかなかった私を20年後にも受け入れてくれる人間力とリーダーシップは、忘れることができません。

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